昼間の話。

 

昼間、わたしは接客業をしている。

なんの保証もない夜の仕事一本で、これからを過ごすのが不安になったからだ。

酒を飲み泥酔しオトコを追っかけていた。気がついたら社会保障や年金という文字に追いかけられるような歳になっていた。もっと早くに気にかけるべきだったが、ノリと勢いで避けていた。重い腰を上げ、やっと日の元の人間や社会と関わりを持とうと思ったわけである。

 

接客業をしていると、色んな人が来る。

平日の昼間は母親が小さい子どもを連れていることが多い。

商品を持った子どもをレジへ促す母親。

「ほら、これお姉さんにお願いして」

微笑みながら子どもに呼びかける母親。

辿々しい言葉で「おねがいします」と言いながら、腕を伸ばして「お姉さん」に渡そうとする子ども。

 

わたしは仕事をしていて、その瞬間が一番嫌いだ。

 

まるで自分の子どもが万人にとって尊い存在であることを疑わない親と、善も悪も知らずただ純粋な小さい子ども。

「お姉さんも子ども好きでしょ?可愛いでしょ?」とでも言いたいような目がわたしは怖くて仕方ない。

子どもは嫌いでも好きでもない。普通。

というか周りを見てたくさん人間がいて、その中でただ数年生きているか数十年、十数年生きているかの違いなだけで何をどう好けばいいのか本当に分からない。

子どもなだけで可愛いとかいう思想も持ち合わせていない。

人を見るときに可愛い、格好良い、素敵だ、と無意識にカテゴライズする。そう思わない人間には特に何も思わない。

 

帰り際、「ばいばい」されるとわたしは困ってしまう。

結局「ありがとうございます」という。

でかい人間にするように、丁寧に。

お見送りの方法はお店で決まっているから、そのようにする。

母親は怪訝に思っただろうかとチラリとみるが、もう「お姉さん」の方なんて見ていない。

商品を抱えた我が子を愛おしそうな目で見つめているだけだった。

 

わたしもいつかそうなるんだろうかと思いながら、今日も酒を飲んでいる。