元彼へ
今年も夏が近づいてきた。
わたしが一番嫌いな季節。
これは一つの区切り。
一番好きだった(正確には今も好き)な彼氏がいた。
付き合ったのはちょうど夏の終わり頃。暑かったし若かった。
仕事終わりに飲みにいき、わたしの押しで付き合った。
素敵な人だった。静かで優しくて頭がとても良かった。笑顔が可愛くて、笑ったときの顔も声も、全部が好きだった。完璧だった。
夕方に起きるわたしは、起きたら彼に連絡をする。近くのカフェに呼ばれて行って、カフェオレを飲んだ。ゲームセンターに行って音ゲーを教えてもらった。うるさいパチンコ屋さんで、勝ったらステーキを食べたり焼き肉を食べた。スーパーのお寿司を2人で分けて食べた。朝まで麻雀を教えてもらった。知らないアニメを教えてくれた。お風呂は絶対一緒に入った。悲しい時は慰めてくれた。一緒に公園で花火をした。コンビニで買ったアイスを食べながら帰った。可愛いものを愛してた。わたしのこと、全部馬鹿にしなかった。絵も趣味も容姿も。わたしはそんなの初めてで、この人とずっと一緒にいたいと思った。
わたしがクソみたいに酔った時や、病んだ時にたくさん迷惑をかけて、たくさん喧嘩した。
今振り返れば、ありえないほどの迷惑をかけた。
わたしの仕事前にご飯を一緒に食べたこと。
起き抜けに漂う煙草のけむり。
なんにも入らない冷蔵庫。
せまいお風呂。
しゃぼん玉。靴下。ゲーム。空き缶。
一緒に歩く道は全部が楽しかった。住宅街も、なんてことない道路も。全部特別だった。
四六時中ずっと一緒にいてもまだ一緒にいたかった。
今でも戻りたいと思う。だけどそんなことは無理だし、きっと万が一に戻れたとしたってきっとまた、上手くはいかない。
夢に見るほどまでに好きで、その後誰かと付き合っても比べてしまって続かなくて。
あの時期が一番、どうしようもないほどわたしは荒れていて、だけどわたしの人生の中で一番綺麗で夢みたいだった。
遠くに行ってしまって、その時「一緒にいく?」と言われた時。
行かなかったのは正解だったのか。
こんなに今も後悔するなら行ったら良かったのか。
あとから思ってもどうしようもない。
今は連絡先も知らない。
何をしてるのかも知らない。
きっと楽しく過ごしてるね。そうじゃなきゃ困る。
数度目の夏。自分の中で終わらせる。
勝手に引きずって、勝手にずっと好きだったんだけど。
きちんと終わりにしたくて、文にした。