痛み止め。

先日、親知らずの抜歯をした。親知らずが埋まっている歯茎と、奥歯の間が炎症をおこしてしまっていたためである。わたしは病院がすこぶる嫌いで、特に歯医者が嫌だったので、当初歯を抜くなんて野蛮なことをするくらいなら自殺してやる、と思っていた。レントゲンを撮って「どの歯から抜きたいとかありますか?」ときかれなんだその質問はと思い苦笑しながら、いえ、どこでもいいです、とこたえた。では右の上下をまず抜きましょう、ということになった。そして結局自殺などせず、あれよあれよと気がついたら歯医者さんの椅子の上。FRINGEで被害者たちが脳下垂体を切られるシーンがふと頭に浮かぶ。恐怖すぎて心臓はばっくんばっくん暴れているし、思考がまわらずボーッとしてしまう。銀色のキャスターの上に置かれている恐ろしい拷問器具。パタパタと動く歯科衛生士。こういう時、何を考えたらいいの。そして、椅子が倒され、人生で初めての麻酔をして、歯茎を切開し歯を抜かれ縫合。三十分くらいで終わり、あら案外あっさりしたものなのね、と少し拍子抜け。しかし怖すぎて疲れたなあと思っていると「歯、持ち帰りますか?」ときかれた。そちらに目を向けると綺麗なカタチの歯が二つ、ガーゼの上に転がっていた。わたしは、はいお願いします、とすぐに返事をした。家に帰って小さな白い包みを開けるといかにも歯!といったかんじの歯が出てきてなんだか面白かった。これはわたしの体の一部、そう考えるとなんだか気持ち悪くて汚かったので、新しいティッシュペーパーに包みなおして机の端に置いた。そしてわたしの犯された口内は、帰宅した後、痛くて痛くて地獄だった。