朝。

 

この時期のこの時間は、すごく明るい。

鳥が鳴いていてるし大通りは車もよく通る。

口に残る煙草の味に辟易しながら、明るい空に照らされて露わになった道の上を歩く。

もともと歩くという事は好きではなくて、それは外にいる人の視線だとか、日光だとか、そういうのが全て混ざり合ってわたしに不快感を与える。今日は人もいないし、曇り空で涼しいのでとても良い気分で歩いている。

 

他人との会話をあまり覚えられないのは昔からの事で、今に始まった事ではない。ただここのところは随分思い出せないことが増えた気がする。まあ覚えたり、思い出す努力をしていないからってだけな気もするけれど。

とにかく、そんなことはちっとも問題ではない。

この町の教会にどれほどの人が救いを求めるのだろうか、あの美容院はいまも営業しているのだろうか、あの人は幸せに暮らしているのだろうか、あと何日生きるのだろうか、そういうことが問題なのだ。

一見なんの問題もないようなことが、すごく大事だったりする。

中学校の校庭にいる三毛猫は、わたしよりも幸せそう。ああ幸せってわかんなくなっちゃった。全部全部わかんなくなっちゃったね。