誰も助けてはくれない。

驚いた。
時が解決するというのは本当で、脳に引っかかったモヤモヤは一週間も経たずして霧散した。どんなことをしても、あんなことがあっても、いつかは必ず忘れてしまう。事実は残っても感情は残らない。
私は変わらず、毎日二十時に出勤し、お酒をのんで計算をして。二時半には退勤する生活をしている。変わらない日常。希望も夢もないけれど、かといって絶望があるわけでもない。ただ生きている。生きているから仕事をする。そこに意味もなにもなく、疑問を抱くこともしなくなった。悪い虫は少しずつ、脳を腐食して考えることをやめさせる。
日中、久しぶりに外を歩くと日差しが眩しくて腹がたった。日陰の風の匂いがまるで夏。行き交う車はみんな私を見ている気がして冷や汗が出る。病院の近くを通ると昔のことを思い出す。私は夏が嫌い。夏のにおいで、日差しで、音で、夏を思い出すと、胸が苦しくて脳に酸素が回らなくなって死にたくなる。
夏、もうすぐに夏が来てしまう。それでも私はなにも変わらず生きているとおもう。